さて、スイス・レコーディングのお話の続きです♪
(長文です)
当初の録音予定は5月でしたが、コロナ第1波でやむなくキャンセル。
博物館も再オープンし、スイス国境が開放された7月、
すぐさま、また一から計画を練り始めました。
関係者のスケジュールを調整して、
新たなレコーディングの日を決定し、
前回と同じように手筈を整えて行きます。
しかし、9月中旬から欧州の感染が急拡大し、
各国の規制が強化され、
刻々と変わる状況に、ハラハラしながらの日が続きました。
私もそうですが、フランスから来るスタッフさんも、
無事にスイスに入国できるのかすら危うい状況。
毎日、
シェンゲン圏のビザ情報を提供するウェブサイト「シェンゲン・ビザ・インフォ」や
各国の渡航規制をとりまとめているEU公式サイト「Re-OPEN EU」、
さらに、「スイス連邦公衆衛生局」や「スイス連邦移民局」(仏語)
「スイス公共放送」(独語)のサイトをチェックし、
スイス大使館にも毎週電話をして、確認を続けました。
この時点で何十回と「今回もキャンセルになるか・・・」と覚悟をしていました。
そして、大打撃な10月30日からのフランス・都市封鎖(ロックダウン)、
11月上旬からはスイス仏語圏の文化施設もクローズすることになり、
フランス・チームは外出すら許されない、
会場の博物館も閉まってしまうとは、
もはや八方ふさがり 😣
「99%は無理だね・・・」とスタッフさんも他の予定を入れ始めたりして・・・。
「博物館のマネージャーや、楽器の責任者と協議をして
録音を決行することにしました!
(でも、泊まる予定の所はクローズになったのでどうしますか?)」
と奇跡のような連絡があったのは、出発日の前夜である11月5日。
バタバタと、当面の宿泊地をおさえて、
チューリッヒ行きの直行便(乗客は私を含めて7人!)に乗って
やって来ました✈
録音の時は念のため、
現地で、音の細かな違いなどをチェックする場合に備えて
楽譜も
ファクシミリ譜、ヘンレ版、べーレンライター版、ウィーン原典版の
各版を持ち込むのですが、それだけでもかなりの重量。
ジャケット写真・ビデオ撮影のためのドレス3着と靴4足、
そして今回は、レストランもクローズしているので、
食料も出来るだけ詰め込み、もの凄い大荷物となりました💦
到着しただけで、すでに達成感が溢れましたが、
急に決まっただけあって、それから怒濤のようにレコード会社から連絡攻めにあい・・・
膨大な契約書の確認、レコーディングのタイムスケジュール決め、
プロモーション・ビデオのインタビュー用の質問事項、
カメラマンとの打ち合わせ、
スタッフ用のホテルの手配・・・などなど雑事に追われヘトヘトです。
でも、閉館している博物館で、録音が始まるまでの数日間、
朝から晩まで思う存分練習させていただき、
名器の17世紀ルッカース・チェンバロに慣れ親しむことが出来ました。
レコーディングに向けて、これまで綿密に練習を重ねてきましたが、
やはり実際にこのルッカース・チェンバロを弾いてみると、
違うアプローチの方がいいかな・・・? テンポも少し変えてみよう・・・と
様々なアイデアが沸いてきます。
毎朝、
閉まっている正面玄関の
重い扉を開けてもらいます♪
そして誰もいない
館内へと・・・
練習風景をちらりとどうぞ👇♪
そうしているうちに、「特例外出証明書」を携えて、
フランスからスタッフさんも無事到着。
電車や飛行機での移動は、途中で警察に止められる可能性が高いということで
みんな自家用車でスイス入りです。
会った瞬間、お互い「ミラクル(奇跡)だね~!!」と。
もはや(誰と)会っても、ビズやハグはもちろんのこと、
握手すら出来ないこの環境・・・さすがに寂しい限りです。
でも、やっと、レコーディングが始まるという、
1週間前には思いもよらなかった現実が、目の前にやって来ました☺
録音は11月12日~14日の3日間。
当初は博物館が閉館後、午後6時からスタート、
夜中1時~2時くらいに終了という予定でしたが、
なんたって、現在のコロナ禍、博物館は終日閉まっているので、
早めに午後3時頃から始めることが出来ました。
今年は例年に比べて、11月にしては寒さが厳しくなかったそうですが、
夕方以降は博物館の中もかなり寒くなり、
私は「手が凍えそうだよ~❄」と
カイロ、靴用カイロをしのばせて、チョコレートを頬張りながら
乗り切ることに。
休憩時間用に、
ナッツバー、どら焼き、ようかん、お饅頭などお腹持ちの良さそうなモノを
たくさん持っていったのですが、
休憩にカフェテリアに降りていくと、
博物館の方が、飲み物、チーズ、フルーツ、マフィン、クラッカー、チョコレートなど
ずらりと用意して下さっていました🍎🥤
この状況下で
私たちを歓待していただいて
本当に有り難い限りです。
私を除いては、
博物館の方々も録音スタッフも、
仏語ネイティブなので、
皆で和気あいあいと
リラックスした時間が持てて、
良かったです☕
さて、最終日(3日目)は、朝から
ヘアメイク、写真撮影、インタビュー撮り、ビデオ撮影、録音と
超ハードスケジュールとなりました。
私もベルトコンベアに乗ったように、一つ終わると次に移動していきます。
もしかしてビデオ撮影の時は、顔がテカりまくってたのでは・・・🙄と
今となって心配になっていますが・・・
(photo © Marisa V Baschiera)
そして夕方からは再び録音。
速く弾く箇所が次々と出てくるのですが、
すっかりハイになっているのか、
どんどんバリバリと弾いていきました。
立ち会ってくださっていた調律師さんには
「すごい持久力!何かスポーツでもやってるんですか??」と
不思議がられましたが・・・
いつでも体力勝負ですね💪
ともかく、午後10時頃、やっと最後のテイクが終わり、
スピーカー越しに、スタッフさんからの拍手👏👏と
「C'est terminé !!!(終わったよ~!)」と声が聞こえました🤩
初めてヌーシャテルを訪れた日から2年余り。
長い長い旅の終わりです🥂
数日後、博物館に挨拶に行きましたが、
とても喜んでいらして、本当にホッとしました。
「もう何度もキャンセルになるかと思ってたんですよ」と言うと、
「いやぁ、実は、ぎりぎりまで中止にするかどうか悩んだんだけど、
君が前向きなので、なんとかなるかな・・・と思って。
でも、意を決して実行して、本当に良かった!」と仰ってくださいました。
そして後日、博物館のフェイスブック・ページ / インスタグラムに
記事と、スライドショーのビデオが載っていました😮🙇♀️
(▶ボタンをクリックすると、スライドショー+音楽が始まります。
アカウントをお持ちの方は、宜しければ ♡もお願い致します☺
万一ご覧になられない場合は、スクロールして下の動画からどうぞ🎥)
(記事はフランス語なので簡単に訳しました)
🎼音楽のひととき 濱田あやさんと
コロナ禍、マスク義務化の中でも、
NY在住日本人のチェンバロ名演奏家、濱田あやさんのCD録音が無事に敢行!
比類無き素晴らしい音色で、世界的に有名なルッカースのチェンバロが、
改めて注目の的となりました。
CDはフランスのアパルテ・レーベルから2021年に発売予定。
J.S. バッハの数々の楽曲が収録されます。
📷3枚目の写真 左より
ピエール=ローラン・へスラー(調律師)
オリヴィエ・フォルタン(アーティスティック・ディレクタ-)
濱田あや(チェンバロ奏者)
ニコラ・バルトロメ(アパルテ社ディレクター)
イニャス・オーヴィル氏(サウンド・エンジニア)
(上の記事/動画と同内容です。
アカウントをお持ちの方は、宜しければ👍もお願い致します☺)
また来夏には、スイスでのリサイタルも決まっています!
その頃は、旅が容易に出来る状況であるといいのですが、どうなることでしょう。
次号は、スイスでの休暇編(素敵な景色🗻)をお届けする予定です☆
みなさまもくれぐれもお身体お大切にお過ごし下さい。
濱田あや
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